結論を申しますと、1年半の点滴を行う予定であればCVポートの留置をお勧めします。
その理由はメリットとして下記が挙げられます。
1. 安全に化学療法が施行できる。
化学療法に使用される薬剤の中には血管外に漏れてしまうと、周囲の組織に壊死などの大きな障害を起こすものが多くあるが、CVポートからの点滴であれば穿刺がちゃんと行われている限りその可能性はほとんどない。
2. 末梢の静脈から点滴のルートを確保するストレスが無い。
末梢の静脈から化学療法の点滴を続けていると静脈炎を起こしてだんだん点滴ができる静脈がなくなってしまい、点滴のルートを確保するために何度も針を刺されることになりかねない。CVポートを一度造設しておけば点滴の時に一瞬、針を刺される時の痛みがあるだけで随分楽である。
3. CVポートからの点滴であれば化学療法中も自由に手を動かせる。
4. CVポートは化学療法の点滴ではなく、造影CTを行う際の造影剤の注入や、脱水の際の補液、高カロリー輸液の点滴にも使用できる。
CVポートを留置するデメリットは下記のようなことがあります。
1. CVポートを埋め込むための手術が必要
通常は局所麻酔下にCVポートを埋め込む必要があり、3㎝程の傷が残る。
昔は気胸、動脈の損傷などの合併症があったが、現在はエコーガイド下に行うため、手術に伴う合併症はほとんどない。
2. 異物感がある。
CVポートが留置されている間は直径2.5㎝程の円盤状のものが皮下に留置されるので、その部分に違和感があるが、日常生活には全く制限はない。また化学療法が終了してCVポートが不要になれば簡単に除去できる。
3. CVポートが閉塞したり、感染を合併することがあり、その場合はいったん抜去する必要がある。
4. マンモグラフィーが撮れない。
CVポートが留置されている側のマンモグラフィーは撮影時の圧迫でCVポートが損相する可能性があるため、撮影できない。
胸部レントゲン、MRIは撮影できる。また飛行機に搭乗する際に金属探知機に反応する場合があるが、CVポートが留置されていることが記載されたカードを携帯しておけば大丈夫。
総合的に考えますと、CVポートを造設するメリットの方が圧倒的に勝りますが、実際に留置するかどうかは主治医とよく相談の上、決めてください。