総論ですが、腫瘍マーカーとは、がん細胞やがん細胞に反応した細胞で作られる物質で、血液や尿中に含まれる量を測定することで、がんの診断や治療の効果をみる手がかりになります。ただし多くの腫瘍マーカーは、正常な細胞でも作られている物質なので、がんがなくても0(ゼロ)ではありません。
乳がんの腫瘍マーカーとしては、CEA、CA15-3、NCC-ST-439が広く用いられていますが、原発乳がんでの陽性率は低く、進行がんや再発がんでも、これらの腫瘍マーカーの陽性率は40~60%程度です。とくに早期がんではほとんど異常は示さないため、乳がん早期発見には適しません。腫瘍マーカーの大部分は再発や、進行した状態で異常値(高値)になりますが、がんの存在の可能性を示すもので、「どこにがんがあるか」「どのくらいの腫瘍があるか」までは分からないので、画像検査など別の検査を併用する必要があります。
また、がん以外の要因でもマーカーが上昇することがあるため、マーカーが基準値を超えた=必ずがんや転移再発がある、とは言い切れません。喫煙習慣や種々の疾患がある場合に擬陽性になりやすいことも知られています。例えばCEAは喫煙や糖尿病などでも、異常値を示すことがあります。このため、腫瘍マーカーは2~3種類を組み合わせて使うのが一般的ですが、すべての変化に対応するわけではありません。
それでも右肩上がりにマーカーが上昇するときは、正常域内であったとしても、がんが増殖してきている可能性がある、腫瘍マーカーが正常域を超えた場合は、体の中にがんがある可能性があります。治療を行い、腫瘍マーカーが下がれば、治療は効果的であり、がんが縮小してきている可能性が高いと判断できます。治療を行っても、腫瘍マーカーが上昇するならば、治療は無効であり、がんが増大している可能性が高いと判断します。このように腫瘍マーカーの値はあくまで参考値であると考えて下さい。